風邪や咳の途中で痰が黄色や緑になると、「細菌感染に変わった」「抗菌薬(抗生物質)が必要」と感じるかもしれません。しかし、痰の色だけでは、どちらも判断できません。
ファイの30秒スキャン
その情報、ちょっとスキャンします。
- 黄色や緑の痰だけでは、細菌感染かどうかは判定できません。
- 合併症のない急性気管支炎では、抗菌薬の効果は全体として小さく、副作用も起こりえます。
- 色よりも、息苦しさ、発熱、全身状態、症状の長さや悪化のしかたを合わせて見ることが重要です。
よく見る話
「黄色や緑の痰は細菌感染の証拠だから、抗菌薬が必要」
スキャン結果
そのままでは言えない
色のついた痰は気道で炎症が起きている手がかりにはなりますが、原因が細菌かウイルスかを色だけで見分けることはできません。抗菌薬が必要かどうかも、痰の色だけでは決まりません。
痰に色がつくのは、細菌の色ではない
気道に炎症が起きると、体を守るために好中球などの免疫細胞が集まります。これらの細胞がもつ酵素などの影響で、痰が黄色や緑に見えることがあります。そのため、ウイルスによる急性気道感染でも色のついた痰は出ます。
つまり、痰の色は「体が反応している」ことは示しても、病原体の種類を直接示す検査ではありません。色が濃くなったことだけを「細菌感染へ変わったサイン」と捉えるのも適切ではありません。
ファイ
色のついた痰でも、抗菌薬が効くとは限らない
13か国・3,402人の成人を対象にした急性の咳の研究では、色のついた痰がある人ほど抗菌薬を処方されやすい一方、黄色や緑の痰がある人で、抗菌薬処方と症状の回復との明確な関連はみられませんでした。
急性気管支炎に対する17試験・5,099人のコクランレビューでは、抗菌薬によって咳の期間が短くなる差は平均で半日弱でした。一方、副作用は抗菌薬群で増えていました。研究に含まれにくい、虚弱な高齢者や複数の持病がある人では事情が異なる可能性があります。
これは「抗菌薬はいつも不要」という意味ではありません。肺炎、百日咳、慢性肺疾患の増悪など、診断に応じて抗菌薬が検討される場面はあります。重要なのは、痰の色ではなく、病気全体を見て判断することです。
エビデンス・スキャン
- 確認したこと
- 色のついた痰があれば、抗菌薬で回復しやすくなるか
- 情報源
- 13か国・3,402人の前向き観察研究(Eur Respir J, 2011)
- 分かったこと
- 急性の咳がある成人では、黄色・緑の痰があっても、抗菌薬処方による症状改善の差は確認されませんでした。これは観察研究で、個々の診断を置き換えるものではありません。
- 確認したこと
- 急性気管支炎に抗菌薬はどの程度役立つか
- 情報源
- 17試験・5,099人の系統的レビュー(Cochrane, 2017)
- 分かったこと
- 全体的な臨床改善には明確な差がなく、咳の短縮は平均0.46日でした。抗菌薬群では副作用が増えました。
- 確認したこと
- 色のついた痰がある急性気管支炎の経過を予測できるか
- 情報源
- 312人の無作為化試験の二次解析(Fam Pract, 2014)
- 分かったこと
- 合併症のない急性気管支炎では、受診時のCRP値によって咳が続く日数に明確な差はみられませんでした。痰の色や単一の指標だけで経過を読む難しさを示す結果です。
どこまで分かっている?
ここまでは言える
急性の咳では、黄色や緑の痰だけを根拠に、細菌感染や抗菌薬の必要性を判断することはできません。合併症のない急性気管支炎に対する抗菌薬の平均的な利益は小さく、副作用や薬剤耐性も考える必要があります。
ここからは言えない
「色だけでは決められない」は、「何があっても心配ない」という意味ではありません。肺炎など別の病気がないか、また一人ひとりに抗菌薬が必要かは、症状、診察所見、持病などを合わせなければ判断できません。
色より確認したいサイン
痰の色より大切なのは、症状の経過と全身の状態です。
じゃあ、どうすればいい?
- 痰の色だけを理由に、残っている抗菌薬を自己判断で飲まない。
- 息苦しさ、胸の痛み、発熱、ぐったり感、症状の悪化や長期化がないかを見る。
- 高齢、妊娠中、免疫機能の低下、心肺の持病などがある場合は、早めに医療機関へ相談する。
処方された抗菌薬は、指示された人が指示された方法で使う薬です。以前の残りを使ったり、他人に渡したりしないでください。
早めの相談を考えたいとき
息苦しい、胸が痛む、意識がぼんやりする、血の混じった痰が出る、高い熱や強いだるさが続く、いったん改善したあと再び悪化した、といった場合は、痰の色にかかわらず医療機関へ相談してください。緊急性を感じる呼吸困難などがある場合は、救急受診を検討してください。
ファイのまとめ
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