寒くなると、ドラッグストアの目立つ場所にビタミンCが並びます。「風邪をひきそうだから飲んでおこう」という使い方も一般的です。ただ、研究を並べてみると、予防・期間・重症度で結論がかなり違います。

ファイの30秒スキャン

その情報、ちょっとスキャンします。

  • 一般の人では、ビタミンCを飲み続けても風邪をひく回数は減らないという結果で一致しています。
  • 日常的に飲み続けている場合には、症状の重さや期間がわずかに短くなると報告されています。
  • 風邪のひき始めに飲み始めても、効果は確認されていません。

よく見る話

「風邪をひきそうなときにビタミンCを大量に飲むと、ひかずに済む/早く治る」

スキャン結果

そのままでは言えない

ひき始めに飲み始める使い方(治療的な使い方)を調べた試験では、一貫した効果が確認されていません。効果が報告されているのは、症状が出る前から日常的に飲み続けていた場合で、しかも差は小さいものです。

そのイメージは、1冊の本から広がった

ビタミンCと風邪の結びつきは、化学者ライナス・ポーリングが1970年に出した本をきっかけに一気に広まりました。彼は化学と平和で2度ノーベル賞を受けた人物ですが、栄養学や感染症の専門家ではありませんでした。

本の根拠になったのは、スキーキャンプの子どもを対象にした試験など、限られた研究でした。その後、統計の扱いや、質の高くない試験に依拠した点が批判されています。有名な人が言ったことと、その主張が根拠に支えられていることは、別の話です。

「誰が言ったか」はとても強く働きます。ノーベル賞2回、と聞くと中身を確認しないまま信じてしまいますね。

ファイ

予防・期間・重症度を分けて見る

その後50年分の試験を集めたコクランのレビューでは、結論が目的ごとに分かれます。

風邪をひく回数については、一般の人では減りませんでした。29の比較・11,306人をまとめた解析で、リスク比は0.97(95%信頼区間 0.94〜1.00)。ほぼ差がありません。

ただし例外があります。マラソン走者、スキーヤー、極寒の環境で訓練する兵士など、短期間に激しい身体的ストレスがかかる集団(5試験・598人)では、リスク比0.48と大きく下がっていました。一般の生活とはかなり条件が違います。

風邪の期間については、日常的に飲み続けた場合に、大人で8%、子どもで14%短くなっていました。大人の8%は、1週間の風邪なら半日ほどにあたります。

症状の重さについては、2023年のメタ解析(10試験・15比較)で15%(95%信頼区間 9〜21%)の軽減が報告されています。

「ひき始めに飲む」は別のこと

レビューでは、症状が出てから飲み始めた試験(7比較・3,249エピソード)も検討されていますが、期間にも重さにも一貫した効果は認められませんでした。多くの人が実際にしている使い方は、こちらです。

多く飲めば効く、という形にはなっていない

効果が小さいと分かると、「量を増やせばいいのでは」と考えたくなります。ただ、大量に飲み続けることには別の問題があります。

高用量では、下痢、吐き気、腹部の張りといった消化器症状が起こりやすくなります。また、尿中に排泄されるシュウ酸が増えることを通じて、腎結石のリスクとの関連が指摘されています。ヘモクロマトーシスのように鉄を過剰に吸収してしまう体質の人では、鉄吸収を促す作用が問題になります。

がん治療(放射線療法、化学療法)やスタチンとの相互作用も挙げられており、治療中の人は自己判断で高用量サプリを足さないほうが安全です。

エビデンス・スキャン

確認したこと
ビタミンCを飲み続けると風邪をひきにくくなるか
情報源
29比較・11,306人の系統的レビューとメタ解析(Cochrane, 2013)
分かったこと
一般の集団ではリスク比0.97(95%CI 0.94〜1.00)で、発症予防の効果は確認されませんでした。
確認したこと
例外的に効果がみられる集団はあるか
情報源
マラソン走者・スキーヤー・兵士を対象とした5試験・598人のメタ解析(Cochrane, 2013)
分かったこと
短期間に激しい身体的ストレスがかかる集団では、リスク比0.48と発症が減っていました。
確認したこと
症状の重さは軽くなるか
情報源
10試験・15比較の系統的レビューとメタ解析(BMC Public Health, 2023)
分かったこと
日常的な補充により、風邪の重症度が15%(95%CI 9〜21%)軽減されたと報告されています。
確認したこと
ひき始めに飲み始めた場合はどうか
情報源
7比較・3,249エピソードを含むメタ解析(Cochrane, 2013)
分かったこと
症状が出てから開始した試験では、期間・重症度ともに一貫した効果は認められませんでした。

どこまで分かっている?

ここまでは言える

一般の人がビタミンCを飲み続けても、風邪をひく回数は減りません。日常的に飲んでいる場合には、症状の重さや期間がわずかに短くなる可能性があります。症状が出てから飲み始める使い方では、効果は確認されていません。

ここからは言えない

「わずかに短い」が個人にとって意味のある差かどうかは、この研究からは決められません。試験の多くは症状スコアや外出できなかった日数といった間接的な指標を使っており、体感とは必ずしも一致しません。

また、ビタミンCの不足がある人と、足りている人では話が変わります。この記事は、通常の食生活をしている人がさらにサプリメントを足す場合についてのものです。

では、どう付き合うか

じゃあ、どうすればいい?

  1. 「ひきそうだから今日から大量に」という飲み方には、根拠がないことを知っておく。
  2. サプリメントを使うなら、製品の目安量を大きく超える自己流の増量を避ける。
  3. がん治療中、腎結石の既往がある、鉄の代謝に関わる病気がある場合は、飲む前に医師・薬剤師に相談する。

食品から摂るビタミンCについては、この記事は制限をすすめていません。話題にしているのは、サプリメントによる高用量の追加です。

ファイのまとめ

ビタミンCと風邪の話は、「効く/効かない」ではなく「何に対して、どう飲んだときに」で答えが変わります。予防はほぼ期待できない、日常的に飲んでいれば少し軽くなるかもしれない、ひき始めからでは遅い。この3つに分けて覚えておくと混乱しません。

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