「3時間睡眠でも平気だから、自分はショートスリーパー」。そんな話を見聞きすることがあります。生まれつき必要な睡眠が短い人は実在しますが、単に睡眠を削っている状態とは、はっきり分けて考える必要があります。
ファイの30秒スキャン
その情報、ちょっとスキャンします。
- 生まれつき必要な睡眠時間が短い「自然短時間睡眠者」は実在します。
- ただし、短く寝ても平気という自己評価だけでは、その体質かどうかは判断できません。
- 一般の人が睡眠を削ると、認知機能が落ち、怒りやいらだちが強まりやすいことが研究で示されています。
よく見る話
「短時間睡眠でも眠くないなら、ショートスリーパー体質だ」
スキャン結果
そのままでは言えない
眠気の感じ方と、注意力や判断力が保たれていることは同じではありません。短い睡眠で日中の機能低下がほとんどない体質は報告されていますが、睡眠時間と本人の感覚だけで見分けることはできません。
同じ「短く寝る」でも、中身は違う
研究でいう自然短時間睡眠者は、必要な睡眠時間そのものが生まれつき短く、短い睡眠でも日中の強い眠気や目立った機能低下がみられにくい人を指します。家族内で受け継がれるタイプは、家族性自然短時間睡眠(FNSS)と呼ばれます。
2009年には、自然に睡眠時間が短い家系から DEC2(現在の遺伝子名は BHLHE41)の変異が報告されました。その後も関連する遺伝子の研究が進み、必要な睡眠時間に遺伝的な個人差があることを示す手がかりになっています。
一方、仕事や生活習慣などのために本来必要な睡眠を取れていない状態は、慢性的な睡眠不足です。見た目の睡眠時間が同じでも、この二つは別のものです。
ファイ
「平気」という感覚だけでは分からない
睡眠不足が続くと、注意力、反応速度、判断力、ワーキングメモリなどが徐々に低下することがあります。厄介なのは、客観的な成績が落ちても、本人の眠気や「できている感覚」が同じようには悪化しない場合があることです。
そのため「眠くない」「長年続けている」「仕事はできている」と感じることは参考にはなっても、それだけで自然短時間睡眠者の証明にはなりません。とりわけ、毎日1時間ほどの睡眠で長期に健康と認知機能を維持できる、という主張を一般化できるヒトの根拠は確立していません。
大人は全員8時間必要?
必要な睡眠時間には個人差があり、「全員が同じ時間眠ればよい」というものでもありません。ただし、個人差があることと、極端に短い睡眠が誰にとっても安全であることは別の話です。
寝不足だと、怒りやすくなる?
一般論としては、なりやすい方向の根拠があります。
睡眠時間を実験的に制限した研究では、通常どおり眠った場合より怒りが強くなり、不快な刺激に慣れにくくなることが示されました。脳画像を使った別の研究では、睡眠を取らなかった状態で、感情に関わる扁桃体の反応が強まり、感情を調整する前頭前野との連携が弱まる様子が報告されています。
日常の言葉に置き換えるなら、普段なら「まあいいか」と流せることに強く反応しやすくなる、というイメージです。ただし、これは集団としてみた傾向です。SNSで怒っている特定の人を見て、「寝不足が原因だ」と決めつけることはできません。
エビデンス・スキャン
- 確認したこと
- 生まれつき必要な睡眠時間が短い人は実在するか
- 情報源
- 家系解析と遺伝子改変マウスの実験(Science, 2009)
- 分かったこと
- 自然短時間睡眠の家系でBHLHE41(DEC2)の変異が見つかり、必要睡眠時間の遺伝的個人差を示す手がかりが報告されました。
- 確認したこと
- 睡眠を削ると怒りは変化するか
- 情報源
- 142人の無作為化実験(J Exp Psychol Gen, 2019)
- 分かったこと
- 睡眠を制限した参加者では怒りが強まり、不快刺激への慣れも弱くなりました。
- 確認したこと
- 慢性的な短時間睡眠は健康と関係するか
- 情報源
- 153研究・517万人の系統的レビューとメタ解析(Sleep Med, 2017)
- 分かったこと
- 一般人口では、短時間睡眠と死亡、心血管疾患、糖尿病など複数の健康アウトカムとの関連が報告されています。観察研究が中心で、短時間睡眠だけを原因とは断定できません。
どこまで分かっている?
ここまでは言える
生まれつき必要睡眠時間が短い人は実在します。また、一般の人が睡眠を削ると、認知機能や感情調節に悪影響が出ることがあります。「寝不足だと怒りやすくなる」という説明には、実験研究による裏付けがあります。
ここからは言えない
睡眠時間や本人の自己評価だけから、自然短時間睡眠者かどうかは判断できません。また、特定の人の怒りや行動の原因を、睡眠時間だけで説明することもできません。
自然短時間睡眠者の長期的な健康への影響には、まだ分かっていない点があります。
では、自分の睡眠をどう見ればいい?
「ショートスリーパーかどうか」というラベルより、日中の状態と生活への影響を見るほうが実用的です。
じゃあ、どうすればいい?
- 眠気だけでなく、集中力、ミス、気分、休日の寝だめなども振り返る。
- 必要な睡眠を意図的に削って、短時間睡眠に慣れようとしない。
- 強い眠気や生活への支障、いびき・無呼吸が気になる場合は、医療機関に相談する。
睡眠時間には個人差があります。数字だけで決めつけず、十分に眠れる機会を確保したときの体調と比べることが、最初の手がかりになります。
ファイのまとめ
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