食事の写真を撮ると、AIがカロリーを教えてくれる。手間がかからないので、記録が続きやすい仕組みです。ただ、その数字がどれくらい実際と合っているのかを調べた研究では、思ったより大きなズレが出ました。

ファイの30秒スキャン

その情報、ちょっとスキャンします。

  • 4つのアプリを計量済みの食事と比べたところ、カロリーは1食あたり250〜345 kcal低く出ていました。
  • 脂質のズレが大きく、平均で約30 g低く見積もられていました。
  • 炭水化物の推定は、他の栄養素より安定していました。

よく見る話

「写真を撮るだけでカロリーが分かるから、記録はこれで十分」

スキャン結果

一部は正しい

記録の習慣をつくる道具としては役立ちます。ただし表示される数字そのものは、実際より低く出る傾向が報告されています。数値をそのまま摂取量として扱うと、食べている量を見誤る可能性があります。

何を、何と比べたのか

この研究を行ったのは、米国立糖尿病・消化器・腎疾病研究所(NIDDK)の研究チームです。

比較の相手になったのは、代謝研究用のキッチンで厳密に計量して作られた102食でした。これらの写真を、MyFitnessPal、LoseIt!、CalAI、Appedietの4つのアプリに読み込ませ、実際の栄養値と突き合わせています。その後、さらに200食以上でも検証されました。

結果は、4つのアプリに共通する方向のズレでした。カロリーは1食あたり平均でおよそ250〜345 kcal低く、脂質は平均で約30 g低く見積もられていました。一方で、炭水化物については他の栄養素より推定が安定していました。

4つとも同じ方向にズレた、というのがポイントです。たまたま1つのアプリが苦手だった、という話ではありません。

ファイ

写真から見えにくいのは、脂質

なぜ脂質が特に苦手なのか。写真という情報の性質を考えると、想像がつきます。

炒めるときに使った油、ドレッシング、ソース、下ごしらえの段階で入った脂は、皿の上では見えません。同じ見た目の料理でも、調理法によってカロリーはかなり変わります。盛り付けの奥行きや、器の下に隠れた量も、1枚の写真からは判定しづらいものです。

研究チームは、低糖質のケトジェニック食のような脂質の多い食事では、アプリの推定がより難しくなる可能性を指摘しています。脂質を一貫して低く見積もる傾向があるためです。

この研究は学会発表の段階

この結果はNUTRITION 2026(米国栄養学会年次大会)で発表されたものです。学会の抄録は専門家委員会による選考を受けていますが、学術誌に掲載される際の査読とは同じではありません。研究チーム自身が、査読論文が出るまでは予備的なものとして扱うよう述べています。

「低く出る」と何が起きるか

減量のためにアプリを使っている場合、この方向のズレはやっかいです。目標の範囲内に収まっているように見えていても、実際にはそれより多く食べていることになるからです。

体重が思ったように減らないとき、原因を意志や代謝に求めたくなりますが、記録の入り口の精度が原因である可能性もあります。

だからといって、アプリをやめるべきという話ではありません。何をどれくらいの頻度で食べているかを把握する、間食の傾向に気づく、といった用途では十分に働きます。絶対値ではなく傾向を見る道具として使うと、ズレの影響を受けにくくなります。

エビデンス・スキャン

確認したこと
写真ベースのアプリはカロリーをどれくらい正確に推定するか
情報源
代謝キッチンで計量した102食を用いた比較(NUTRITION 2026 発表、査読前)
分かったこと
4つのアプリいずれも、1食あたり平均250〜345 kcal低く推定していました。
確認したこと
どの栄養素のズレが大きいか
情報源
同発表における栄養素別の比較(NUTRITION 2026 発表、査読前)
分かったこと
脂質が平均で約30 g低く推定された一方、炭水化物の推定は他の栄養素より安定していました。
確認したこと
どんな食事で誤差が大きくなりやすいか
情報源
追加の200食以上を用いた検証(NUTRITION 2026 発表、査読前)
分かったこと
脂質の多い低糖質食では、アプリの推定がより難しくなる可能性が指摘されています。

どこまで分かっている?

ここまでは言える

厳密に計量された食事を使った比較で、4つの写真ベースのアプリはいずれもカロリーと脂質を実際より低く推定していました。方向のそろったズレです。

ここからは言えない

学会発表の段階であり、査読論文として公表されていません。再現性や詳細な解析は、今後の発表を待つ必要があります。

また、対象は研究用に整えられた食事です。日常のさまざまな食事や、アプリの更新後の性能について、同じ数字が当てはまるかは分かりません。アプリを使うことで減量の成否が変わるかどうかも、この研究は扱っていません。

アプリとの付き合い方

じゃあ、どうすればいい?

  1. 表示されたカロリーを正確な摂取量として扱わず、日々の傾向をつかむための目安として使う。
  2. 油・ソース・ドレッシングを使った料理では、表示より多めに見積もっておく。
  3. 体重や体調の変化と合わせて見る。数値だけを追いかけない。

食事の数値を細かく管理することが不安につながりやすい人もいます。体重や食事の記録が気持ちに負担を与えていると感じる場合は、いったん離れることも選択肢です。

ファイのまとめ

便利な道具ほど、数字をそのまま信じてしまいます。このアプリたちが苦手なのは、写真に写らない油でした。使うのをやめる必要はありませんが、「たぶん少なめに出ている」と思って眺めるくらいがちょうどよさそうです。

ファイ